ガレキを活用した防災林事業の計画が急速に進んでいる。細川元首相が2012年3月に野田首相に提言。そして、4月のTBSの番組内で野田首相は「青森県から千葉県までの被災した海岸140キロで防災林を造っていく。今年度中に50キロを造りたい」と述べた。
このガレキを活用した防災林事業のそもそもの提言者は宮脇昭氏(横浜国立大学名誉教授)である。宮脇氏は植樹のスペシャリストとして国際的に評価が高い。84歳となった今も活躍している。震災直後は現地を視察し、シイ・カシ・タブなどの照葉樹林を中心とした防災林が津波の減災に大きな効果があることを報告している。国交省、林野庁、研究者も防災林の津波の減災効果に言及している。
ここで気になるのは広域処理が必要なガレキの削減効果である。首相官邸の資料によれば、南北50km ×東西(50 – 200m)×高さ(3 – 10m)の防災林を作成する計画である。この防災林の盛土にガレキの活用が提言されている。これほど広範囲でガレキを活用して防災林を造成すれば、相当程度の広域処理の必要量(約400万トン)が減るように思える。
そもそも広域処理に必要とされた400万トン(岩手県約50万トン、宮城県約350万トン)の総量も相当量減る見込みのようである。宮城県の村井知事は平成24年4月23日の記者会見で、想定よりガレキが少なく、なおかつ防災林等の活用でガレキの総量が当初の見込みより減るとの報告をしている。
もちろん、それでもガレキの広域処理が必要ならば、京都市も含めて安全上問題のないガレキの処理を分担すべきと考えるが、そもそもの広域処理の必要性については、今一度考えてみる必要はあるのではないだろうか。それでも必要となれば、被災地の1日も早い復興のために、ガレキの広域処理を含め、出来る限りの支援をしたいと思う。
(参考文献)
首相官邸「みどりのきずな再生プロジェクト」
http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2012/pdf/midorinokizuna.pdf
国交省「東日本大震災からの復興に係る 公園緑地整備の基本的考え方」
http://www.mlit.go.jp/common/000168435.pdf
林野庁「今後における海岸防災林の再生について」
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tisan/pdf/120201-01.pdf
森林保全・管理技術研究会「津波と海岸林に関する調査研究事業」
http://www.hozen-ken.jp/menu/2012-01tunami-mokuzi.html
宮城県知事記者会見(平成24年4月23日)
http://www.pref.miyagi.jp/kohou/kaiken/h24/k240423.htm