文化政策を考える

 

国家予算に占める文化予算の割合と寄付金のGDP比較を見ると面白い。フランスの文化予算は日本の約10倍であるのに対し、アメリカの文化予算は日本の約4分の1である。一方、フランスの寄付金は日本と同程度であるのに対し、アメリカの寄付金は日本の約100倍以上なのである(出典:文化庁「文化芸術関連データ集(平成23年度版)」)。フランスは行政主導による文化支援であるのに対して、アメリカは寄付金を通した文化支援であることが見て取れる。

 

橋下大阪市長が文化行政のあり方に疑問の声を上げ、大阪フィルハーモニーや文楽への補助金を削除した。賛否両論の意見があり、物議を呼んでいる。厳しい財政状況が続いている。文化予算も政策効果を十分に検証しなければならない。例えば、補助団体に対しても経営の効率を求める声は必要であるし、補助の公正性を検証するのも正しいであろう。ただし、行政による文化の支援そのものを効率性の観点だけで切り捨てるのには疑問がある。

 

上記の国際比較が示す通り、日本では寄付金文化は、税制の課題などもあり、根付いていない。企業によるメセナ活動も一時注目をされたが、経済の影響を受けやすく、文化活動の支援には限界がある。そのため、民間(市場)だけでは、文化の醸成は難しく、行政による文化の支援は一定程度は必要ではないだろうか。文化の外部経済(効果)を考えると、行政の文化支援は「市場の失敗」の補完であり、正当化できるとの指摘もある。

 

日本の文化拠点である京都の文化政策のあり方とは何か。蓑豊氏(兵庫県立美術館長)は、これからの日本は「経済が文化を支えるのではなく、文化が経済を活性化させる」視点が必要であると指摘している。蓑豊氏が初代館長となり、「子ども」をテーマに大成功をおさめた21世紀美術館などを参考にしながら、京都市への文化政策の提言を研究したい。

 

(参考文献)

ボウモル&ボウエン(1966)『舞台芸術 芸術と経済のジレンマ』芸団協出版部。

http://www.amazon.co.jp/dp/493127627X/

蓑豊(2007)『超・美術館革命―金沢21世紀美術館の挑戦』 角川書店。

http://www.amazon.co.jp/dp/4047100951

神野直彦(2011)「わが国における寄付文化と税制」『税研』、26(6)、pp. 26-33、日本税務研究センター。

http://www.jtri.or.jp/publication/dl2.pdf?code=1&num=157

 

 

photo by: Kusakabe
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