イノベーションを政治にも

 

イオンモール京都。八条口にある南区で最大のショッピングセンター。ここには、ユニクロ、ソフマップ、ダイソー、大垣書店、ヴィレッジ・ヴァンガード、カルディ・コーヒー・ファーム、無印良品、ユナイテッド・アローズ・グリーンレーベルなど大好きなお店が並ぶ。その中でもよく行くのは大垣書店。昨日、大垣書店に行くと、「書物復権」というコーナーがあった。そこにあった本のひとつがエリック・ホッファーの『大衆運動』である。

 

エリック・ホッファー(1902 -1983)は、アメリカの哲学者であり、波瀾万丈の人生を歩んだ。7歳で母と死別すると同時に視力も失う。その後、15歳で奇跡的に視力を回復。それからは失明に対する恐怖から読書に没頭。1日10時間、12時間と本を読んだ。18歳で父とも死別。農園作業者や沖中仕(おきなかせ)として働きながら、物理学、数学、植物学などの多彩な学問を独学で学んだ。

 

ホッファーは、65歳まで仕事を続けた。沖中仕(おきなかせ)ほど「自由」と「運動」と「閑暇」と「収入」が適度に調和した仕事はなかったと言う。ホッファーは1951年に『大衆運動』を出版。在野の哲学者として注目される。1964年からはカリフォルニア州立大学で週に1度の講義を担当した。1983年に80歳でその生涯を終えるまで、独自の視点で社会を観察し、箴言に富む本を書き続けた。

 

はじめて読んだホッファーの本は『初めてのこと今のこと』である。鋭く社会を分析している。その第1章は「遊び -人間のもっとも有用な行為-」である。ホッファーは「実用的な道具のほとんど全てが非実用的な関心の追及や暇つぶしにその起源がある」と指摘。「遊び」の重要性とそれを生み出す「余暇」の必要性を訴える。そして、人間の創造力の源泉は、人間の内なる子供にあると指摘する。

 

いつも感じているのではあるが、人間の一生においては、5歳という時期が黄金時代である。人間は皆が5歳の時には天才である。少年期に特有の困惑は、大人になりきっていないためではなく、もはや子供ではないためである。成熟することに意味があるとするならば、その成熟とは5歳児に特徴的な脇目をふらずに何かに熱中する能力とどん欲なまでの技術習得欲を甦らせることであらねばならない。

 

この指摘に感動をした私は『コドモであり続けるためのスキル』という本を買った。5歳児の創造力は素晴らしい。思えば、日本を代表する子供である「クレヨンしんちゃん」も5歳児であり、創造的な毎日を送っている。閉塞した社会を変えるのはイノベーションだ。半導体の研究で世界的に有名な竹内健氏は世界で勝負する仕事術』の中で職場における遊び心の大切さを語っている。Google やFacebookのオフィスも遊び心に溢れている。

 

私も創造的な仕事を産み出すために、いくつかの遊び心を職場に持ち込んでいる。しかし、政治家は市民の命を預かる重責を担うため、高い緊張感も求められる。そのため、遊び心を持ちすぎると、仕事の鬼であるボスから怒られる。とはいえ、閉塞した社会に変革を持ち込みたい。高い緊張感の中にも遊び心を持ちながら、今までなかった発想を社会に提案したい。イノベーションを政治にも。イノベーションが社会を動かす。

 

photo by erichoffer.net

 

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