平成23年度の京都市の国民健康保険事業(国保)は約23億円の黒字となり、4年連続の黒字を達成する見込みである。累積赤字は41億円となり、平成15年には108億円の累積赤字が半分以下に縮小する。この理由のひとつは、医療費の抑制や国保料の徴収率の向上に務めた成果であり、この取組みは評価したい。
しかし、この黒字にもカラクリがある。国保が黒字と聞けば、保険料から医療費を引いた額が黒字なのだと、一見思える。しかし、国保には多額の公費が投入されているのだ。平成23年度の決算の見込みでは、約202億円の保険料に対し、約907億円の医療費(一般医療分)を支出している。つまり、約707億円の給付超過なのだ。これを支えているのが国、府、市からの交付金である。もちろん、だからと言って、国保料の値上げを求めているのではない。国保の加入者は高齢者や低所得者が多く、保険料だけで医療費を支えることはできない。そのため、一定の公費の投入は必要である。
しかし、ここで問題にしたいのは、一般会計からの「法定外繰入金」である。法定外繰入金は、文字通り、法律のルールではなくて、一般会計との調整の中で、その額が決定される。平成23年度の決算見込みを見ると、一般会計から約77億円の法定外繰入金が国保会計に投入されている。この法定外繰入金がなければ、京都市の国保会計は約54億円の赤字となる。
国保が黒字と言えば、国保を値下げしろとの声が聞こえてくる。しかし、医療費が増大する中で、国保の値下げをすれば、財政悪化に拍車をかけるだけである。京都市は、国保の黒字は「法定外繰入金」がなければ、国保は大幅に赤字であることを市民にしっかりと示し、ジェネリック医薬品の活用や予防医療の徹底等による医療費の抑制を市民により一層訴えるべきではないだろうか。